【川。ときどき畑】四万十川の川漁師 横山史憲さん

Writer 神尾

6月23日。
梅雨なはずですが、梅雨らしからぬ晴天が続く四万十です。

気温は夏で、たまにオニヤンマを見かけますし、セミの鳴き声もちらほら聞こえていたり、朝晩は涼しいですが、だんだん蒸し暑くなってきたり、やっぱし梅雨やなぁと思います。

さて、今回は、四万十市で川エビ漁をしている横山さんにお話を伺いました!
場所は、以前ご紹介した勝間沈下橋のたもと!
紹介した記事はこちらから。

スリルと爽快感のバランスがいい!!川エビ漁用の川舟

川エビ漁の取材にご協力いただけるのは、横山史憲(よこやま ふみのり)さん。
川エビ漁は4月1日~8月31日までの期間でのみ漁が行えます。

横山さんに初めてお会いする私は、面識があったスタッフ佐竹に「横山さんってどんな方ですか?」と聞くと、「豪快な方よ。面識なくてスーパーとかで見かけたら、絶対話しかけれん雰囲気があるけど、面白いよ」とのこと。

どんな強面の方かとドキドキしながら待っていると、「どうもどうも!!」と声が。
「今日履正さん(弊社代表)の取材の日やったけんど、履正さんから電話ないし、忘れちょうがやないろうかと思いよりました~」と代表と軽快に話す横山さん。

確かに豪快な方で、聞いてて笑顔になってしまう声で話す方でした。

「じゃあ、いきますか!舟にいつもより多く人が乗るけん、川エビの仕掛けもたくさん引き上げれんし、昨日仕掛けたやつやけん、量はそんなに入ってないと思うで!」

といって、舟に積んでいた仕掛けを降ろしはじめる横山さんご夫婦。
「これは何の仕掛けですか?」と伺うと「鰻ですよ。針に餌をつけて、川エビの仕掛けと同じように沈めちょくがです」と教えていただきました。
へぇ~。なんて思っていたたら、舟の仕掛けが全部降りていて、「じゃあ、乗ってくださ~い!」って言われました。

生まれてこの方、川舟に乗ったことがない私は、内心どきどき。

舟に乗る1歩目が一番恐かったです。
でも、乗ってしまえば、こっちのもんです(笑)

舟のエンジンの近くにいる横山さんの方を向いてしゃがんで、待機。

この舟のエンジンというのは、舟を進める船外機のエンジンです。

横山さんが舟のエンジンをかけながら「(舟が)こけたら、自力で泳いで帰ってきてくださいね~」なんて冗談言っている間に、川舟は岸からゆっくりと離れていき、四万十川の川面から見る沈下橋もきれいやなぁなんて思っていたら、舟が後ろ向きに進みだしました。

「あぁ~!そっちか~!!」
思っていた方向と真逆に進んだので、あわてて、進んでいる方向に体を方向転換。私がうしろ向きに座っていたので、舟は前進しただけですが、びっくりしました(笑)

ぶい~んと川面を行く舟は落ちそうなスリル感と、爽やかな空気の中を進む爽快感が良いバランスで、すごく楽しかったです。

昨日仕掛けたポイントに到着すると、エンジンが切られ、静かになりました。
でも、仕掛けにはまだ手が届かない。
そこで、櫓(ろ。押し引きして和舟をこぎ進める道具のこと。)の出番です。

ゆっくり漕いで仕掛けに近づいていくと、奥さまが「ちょっとこめんなさいよ」と川に手を伸ばして、仕掛けを引き上げていきました。

「入っちゅう。入っちゅう」と言いながら次々と仕掛けを上げては、かかった川エビを水が入ったタライに入れてを繰り返すこと25回。1列分の仕掛けを上げ終えました。

がっつり戦闘態勢のエビ。奥さまにはかないませんよ(笑)

「はい、じゃあ、帰りま~す」
帰りは川の流れを利用しながら櫓でゆっくりと帰っていきます。

獲った川エビは、生簀用のかごに入れられます。ある程度いっぱいになってから売りに行くため、何日間か飼うんだそうです。
昨日獲った川エビと今日獲った川エビをあわせると、こんなにたくさん!

「いや~。美味しそう~」と思ってしまいました(笑)

仕掛けはもちろん手作り!

次から次へと上がる仕掛け。どんな作りなんだろうと思い、伺うと、「全部手作りですよ。」とにこにこ。

「筒の蓋は植木鉢の5号の皿に穴を開けて作って、筒とつなげて、中に川エビをおびき出す用の米ぬかを入れる小さいかごみたいなのを網で作って、蓋の反対側には、入ったら出れん“返し”をつけちょうがです。」

この仕掛けをロープでつなげて、両端に目印用のウキと、流されないために重りをつけて、完成だそうです!

蓋の穴の数とか、網目の大きさとか、少しずつ違っていて、どれが一番いいか、試行錯誤した跡がうかがえます。

夫婦の呼吸、まさに「阿吽」

川エビの仕掛けは、川を下りながら引き上げていくんですが、その呼吸、まさに「阿吽の呼吸」。
次々に仕掛けを上げていく奥さまと、川の流れの速さと向き、仕掛けと船との距離、そして奥さまが仕掛けを引き上げる速さを見ながら舟を自在に操る史憲さん。

なんともないようにすいすいと微調整しながら舟を操っていて、「難しいんだろうなぁ、これ」と思いながら、見たことでした。

畑も、漁も。

改めまして、こちらが横山史憲(よこやま ふみのり)さんと奥さま。

もう何十年も漁をされているのかと思っていたら、なんと、漁師歴6年。
あんなに綺麗に舟を動かせるのだから、毎日漁に出ているのか?と思いましたが、「畑もあるけんねぇ。来れる時は来るけど、そんなに長い時間は漁しよらんよ」とのこと。

畑仕事もしながら、川漁も行う二刀流の横山さん。

よくよく話を聞いていくと、6年前に横山さんの親戚の方が持っていた火振り漁の漁業権を譲ってもらってから漁を始めたそう。

「舟自体は子供のころから漕ぎよったし、エビもとりよったけん、獲り方は知っちょったけんど、仕事でやりだしたがは6年ばぁ前ですね(仕事でやりだしたのは6年くらい前ですね)。」

櫓の漕ぎ方も、対岸への渡り方も、川エビの仕掛けの作り方も、仕掛けの置き方も、子供のころからやってきたからこそなせる業でした。

人が「おいしい」言うて食べる顔が一番好き

ふと、「川漁をしていて、何が一番楽しいですか?」と聞いてみると、「何が楽しい…ねぇ…。川の漁は全てが楽しいよ。獲ることが好きなもんで(笑)けど、それよりも、人が『おいしい』って食べる顔を見るのが好きですね。」

さらりと出た一言。
「そう思うがは、漁をしよう(漁をしている)人のほとんどが思うがやないでしょうかね。(漁をしている人は、)自分の口に入ることより、人に分けることの方が多いでしょうね」

私の身の回りの物を作ってくださっている方々がいることを忘れてはいません。
それでも、私はいろんな方に支えていただいて生きているんだという実感が心に広がりました。

「去年らぁはここの河原で獲れた鰻を焼いて、みんなにご馳走したんですよ。もし今年もやるやったら、来ますか?」

というお言葉に、思わず「はい!」と手まで上げてしまった私。穴があったら入りたい…
横山さんの「よっぽど鰻が好きなんやね(笑)」という言葉と笑顔に救われました(笑)

川エビ、鰻…

横山さんご夫妻が漁で獲っているものは

川エビ、鰻、ツガニ、鮎

いやぁ~四万十川の幸、よりどりみどり!(笑)
もちろん、すべて四万十川育ちの天然もの。
ちなみに、横山さんが一番好きなのは、やっぱり鰻だそうです!
四万十川の天然の鰻!美味しいんですよ。これが。

櫓によって舟の進みようが全然違ったり、竿も一番使いやすいのは榊の竿で、榊なら枯れてもちゃんと粘ってくれるので、使いやすかったり、横山さんの川舟と十和の方でつかわれている川舟は作りが微妙に違っていたり、勝間ですいすい舟を動かして川漁をしていた横山さんが、「十和で鮎釣ってくれって言われても無理やもん」と言ったのにはいろんな理由があったり。
まだまだ書きたいことはたくさんあるんですが、このあたりで失礼します!

川舟や櫓を作っている方に取材に行ったときに、出していこうかな~と思っています!

梅雨真っただ中の晴天の中、豪快に笑う横山さんと爽快な川エビ漁の取材模様でした!

おまけ

横山さんを含む川漁師さんが鮎や川エビを出荷するのは四万十市西土佐にある「鮎市場」さん。
こちらは道の駅よって西土佐の敷地内にあるんですが、夏場にお店の前を通ると、鮎の焼けるいい匂いがしてくるんですよ。

SHIMANTOZIGURIストアでご購入いただける川エビはこの鮎市場から「直発送」になります。