国産紅茶は高知が発祥!今年も「しまんと紅茶」のシーズン到来

Writer 佐竹

観測史上最短で最速の15日間の梅雨が明けたかと思ったら、全国的に電力がひっ迫するほどの猛暑に襲われながら、2022年もあっという間に折り返しの7月に突入しました。いよいよ夏本番か!と思った矢先の台風4号到来により、一時は四万十川の増水にヒヤヒヤする場面もありましたが、大きな被害はなく難を逃れた四万十。自然の怖さを改めて思い知りつつ、台風シーズンが早くも来たことにも月日の流れの早さを感じます。

今回は、6月から始まった四万十川の天然鮎の陰に、今年も密かに始まった「しまんと紅茶」の新茶についてご紹介いたします。

今年も「しまんと紅茶」はじまりました

(ぜひ無糖で飲んで自然な渋みを味わってほしい「しまんと紅茶」)

“じつは茶処しまんと緑茶”をキャッチフレーズに新茶を楽しんだ後は、夏摘みの茶葉で製造される「しまんと紅茶」が四万十の夏を彩ります。

カフェやレストランでよく口にする外国産の紅茶は香りづけされているものが多く、日本人の私達はそれにすっかり慣れているせいか、香りの優しい国産紅茶は物足りないと感じる人もいるかもしれません。

しかし、全国各地に根付く国産紅茶の「地紅茶」は、香りづけされていないからこそ茶葉本来の渋みや味わいを感じられ、奥が深く滋味深いのです。例えば無糖のしまんと紅茶は食事のお供にもピッタリで、緑茶に慣れ親しんだ日本人におススメしたい楽しみ方でもあります。

(青々とした二番茶が、美しい赤褐色の紅茶に生まれ変わります。)

四万十でも、お茶を取りまとめる合同会社広井茶生産組合(以下、広井茶)によって、今年も「しまんと紅茶」の製造がスタート。

紅茶づくりは6月17日から始まり、7月中旬ごろまで続きます。春の緑茶づくりを終えて静かだった山の中の茶工場も、再び賑やかになる様子がこの地域の夏の風物詩のひとつです。

(四万十川と茶畑に挟まれた場所に佇む茶工場)

四万十のお茶歴史

(四万十のお茶はいまでも「手摘み」と「手刈り」)

四万十のお茶づくりは、紅茶から始まりました。
その始まりは昭和34年に遡り、 紅茶づくりのために紅茶用の品種を植えるという、まさにゼロからのスタートでした。それから約10年間、紅茶づくりを頑張ります。

しかし、外国産の紅茶のブランド力に押され、また、輸入自由化で有名ブランド紅茶の価格が安価になったこともあり、紅茶づくりからの撤退と、緑茶づくりへの転換を決断しました。

そんな紅茶事業の失敗から、広井茶は品質向上こそが重要であると考え、高校を卒業したばかりの岡峯久雄さん(現在の広井茶生産組合の代表)に緑茶づくりを学ばせるため、静岡に2年間「留学」させました。昭和53年に帰郷した岡峯さんは、地元生産者の期待に応えて良質の緑茶づくりを指導し、やがて、地域で二番目の農作物(一番目は椎茸)へと発展させました。

(合同会社広井茶生産組合代表の岡峯久雄さん)

順調に見えた緑茶づくりも、ここに来て再びある壁にぶつかります。それは、せっかく四万十の山間部の気候にあった美味しい緑茶ができても、地元JAに出荷すると県外の一大産地に送られ混ぜられてしまうという現実でした。それを打破するため、プライドを奮い立たせた地元の茶農家達と地域商社四万十ドラマが一致団結して、自分たちの作ったお茶を“混ぜられるお茶から混ぜちゃるお茶へ”と独自の販売ルートを開拓。県内外に「しまんと緑茶」の名を全国に発信していったのです。

忘れられなかった紅茶への想い

(しまんとREDの愛称で親しまれ、全国のファンも多い「しまんと紅茶」)

しまんと緑茶が産地を確立していく中、広井茶は焙じ茶・水出し茶・ペットボトル飲料などオリジナル商品を次々と発売。独自のルートとJA出荷の2極で展開し、後継者が少ないながらも茶農家も世代をまたぎ、何とか産地を守っていました。

そんな中、どうしても心に引っ掛かかるのは、『しまんと紅茶』のこと。

四万十のお茶の原点でもある、幼い頃に味わったあの紅茶を何とか蘇らせたい。今度は広井茶の矢野健一さんを中心に40年振りに「しまんと紅茶」を復活させました。

(しまんと紅茶を復活させた茶農家の矢野健一さん)
(緑茶とは異なる“自家発酵”の工程を経て芳醇な紅茶ができあがります)

地紅茶ライブ@しまんと

(2022年6月25日地紅茶ライブ@shimantoおちゃくりcaféの様子)

熱い男たちが挑戦した紅茶復活から15年、今年6月下旬に、しまんと紅茶復活に一役買った、全国地紅茶サミット世話人の赤須治郎さんを講師に「地紅茶ライブ@shimantoおちゃくりcafé~しまんと紅茶のアンバサダーになろう~」が開催されました。

(地紅茶ライブ会場となったshimantoおちゃくりcaféの目の前は四万十川)

~ライブ当日の紅茶~

・ウエルカムティー「しまんと紅茶のアイスティー」
・2杯目「しまんと紅茶のホット」
・3杯目「あうんアールグレイ」四万十×馬路村のコラボ商品
・4杯目「しまんとチャイ」桐島畑のジンジャーシロップ入り

地紅茶ライブ当日は、四万十川を眺められる「shimantoおちゃくりcafé」のテラス席にて、4パターンの飲み方でしまんと紅茶を味わいながら、赤須先生お手製の山塩スコーン・ジンジャーブレッド・苺ジャムも堪能。

(淹れたての紅茶とお菓子に心がほぐれます)
(4杯目に登場した「しまんとチャイ」にハマる人続出)
(四万十川を眺めながら今年の新紅茶をいただく贅沢な時間)

赤須先生「茶葉のパッケージなどに書かれている、産地のおススメ通りに淹れましょう。自分流にアレンジするのはその次です。そして、ぜひお菓子と一緒にいただいて紅茶をもっと気軽に愉しんでくださいね。」

(パッケージされた「しまんと紅茶」の新茶も間もなく店頭に並びます)

岡峯さんの「しまんと緑茶」の産地づくりと、矢野さんの「しまんと紅茶」の復活劇。
そして、「高知は国産紅茶の発祥の地、明治10年のことです」と高知の紅茶の魅力を伝える赤須さんの紅茶教室。

今年も無事にしまんと紅茶シーズンが到来した事に感謝しつつ、そんな歴史とロマンのある地元の茶産業を、これからも地域商社として支えなければ!と強く感じました。