これぞ発祥の地!500匹の鯉のぼりが四万十川にかかる春の風物詩「こいのぼりの川渡し」が2年振りに復活しました。

Writer 佐竹

春の四万十川沿いの風景と言えば、モコモコとして“山笑う”新緑、いまでも一番茶は手摘みの“しまんと緑茶”の新茶、そして何と言っても季節の風物詩「こいのぼりの川渡し」を忘れちゃいけません。

コロナ禍で、2年振りにやっと再開した川渡しは町民の希望でもあります。
いったいどうやって山から山へ鯉のぼりを繋げているのか!?
何度聞いても口頭では理解できなかったスタッフ佐竹が、設置当日に現場に張り付いて取材してきましたよー。

鯉のぼりの川渡し発祥の地

(2年振りに四万十川にかかった500匹のこいのぼり)

5月5日端午の節句の象徴でもある鯉のぼりは、江戸時代の武家がはじめたとされる日本の風習で、男児の健やかな成長を願って飾られるものですよね。でも近年、田舎の家庭でも少子化も重なってか、なかなかお目にかかれなくなりました。

ことの始まりは、今から48年前。
旧十和村でソフトボールの練習をしていた子供たちの言葉がきっかけでした。

「小学生になったき、家で鯉のぼりをあげてくれんなった...。」

それを聞いた地元体育会の大人達が、さっそくその翌年に地域の子供たちの鯉のぼりを集めて、四万十川の対岸へロープを引き約50匹吊るしたのです。

(鯉のぼりがかかる「こいのぼり公園」には、発祥の地を物語る石碑が。)

そこから他の家庭からも希望する声が届き、200匹、300匹とその数は年々と増え続け、今ではとうとう500匹に。毎年マスコミでも取り上げられるようになり、全国から見物客があつまる春の観光名所となりました。

鯉のぼりを吊るすまでに4時間のドラマ

48年もの間、地元の十和体育会で引き継がれてきた、子供たちとの約束。
いまや、あの頃の“子供たちの子ども”世代が鯉のぼりをあげるメンバーとなり、現在の地元「十川スポーツ少年団(通称:スポ小)」との交流を続けています。

(待ちに待った2年振りの鯉のぼりに喜ぶ、十川スポーツ少年団。)

2022年4月9日(土)鯉のぼりかけ当日

コロナ禍で2020年から中止が続き、大切な約束を守れず悔しい思いを味わった地元の有志達。今年は2年振りという事で、早朝から気合十分の鯉のぼり吊るしの作業がはじまりました。

(鯉のぼりをかける作業当日、現場への集合時間は朝の7時。)

山と山とを結ぶ

この前日の夕方「ウウィーーーーーーン。」と音を立てながら、対岸から何かやってきた。

(見えますでしょうか?空から何かがこちらへ飛んできています。)

そう、ザ・文明の利器「ドローン」さんのご登場!

対岸の山の上に設置したアンカーから、第一弾のバインダーの紐を連れてやってきました。意外にも静かな幕開けです。

そして翌日の朝、まずは国道381号線の山側から、同じくバインダーの紐を地上へ下ろします。
1投目は電線を越えられずあえなく失敗でしたが、2投目で見事に電線越え。
(私だったら肩壊すだろうな。と密かに心の中で呟きました。)

(山から投げられたバインダーの紐をキャッチ!国道側のスタートがきられた瞬間。)

ここからは、しばらく地味な作業が続き、ただひたすらに対岸のバインダーの紐を引く。山と山とを結ぶ土台作りです。

(対岸の山から届いたバインダーの紐2本を、ひたすらに引く。)

ロープとロープの結束式

そしてお次は、この細いバインダーの紐から第二弾のロープへと転換。このロープの結び目を外れないようしっかり結び、なおかつ滑車に引っ掛からないよう、結び目が団子にならないようにするのが重要なんだとか。

(山の向こうから来たロープとこちら側を結ぶ、大事なロープの結束式。)

そしてウインチを駆使しながら、このロープを国道側と対岸側のアンカーを起点に繋いでいきます。ここでやっと“山と山が繋がる”という訳です。

そしてようやくワイヤーへ

そしてお次は、鯉のぼりを実際にかける最終形のワイヤーに切り替え。全長650mの上下2本かかったロープが、山と山とで繋がってゆっくりゆっくりとワイヤーに切り替わっていきます。

(ギリギリと音を立てながら、ゆっくりゆっくりワイヤーが張られていきます。)

なんと、開始からここまでが約4時間!!

対岸とこちらの様子を無線で確認し合いながら、男たちの熱いロマンはまだまだ続きます。

500匹の鯉のぼり登場

地味な作業を繰り返し、指示待ち、ロープ待ちなどを幾度となく繰り返し、ようやく主役の鯉のぼりが登場。

(朝の曇りから一転して快晴となり、太陽がまぶしく汗がにじみます。)

大空でまんべんなく配色されるよう、実際にかけていく前に色分けをしていきます。
どこかのお家でかけてあった立派なものから、手作り様な温かみがあるもの。寄せ書き入りで思い入れがあるものなど沢山!

(お父さん鯉のぼりの立派な金太郎さんが、一際目を引きます。)

いよいよ大空に羽ばたく鯉のぼり

さあ、地上と山側の二手に分かれた総勢30名のチームワークの見せ所!
ワイヤーに始点の印がつけられ、いよいよ吊るしがスタートします。

吊るすまでは地味であんなに長い時間の作業だったのに、ここから急激に慌ただしくなります。

(まずかけるのは対岸の山の上の方なので、小さいサイズからスタート。)
(赤!つぎは青!指令が飛び交う現場から、鯉のぼりが次々と出発。)

四万十ドラマ公式Facebookページの動画もぜひご覧ください。

思わず撮影するのを忘れてしまうくらい美しく、本当に待ちに待った2年振りの「こいのぼりの川渡し」が実現しました。

こんなシーンも愛おしい

いつも会社の事務所から眺めているので、時にはこんなシーンもあります。
これはこれで風情と愛着があって、愛しい景色のひとつなんだなぁ。

(雨で元気のない鯉のぼり達と、晴れると午前中にみられる工場の巨大魚影。)

そんな四万十町十和地域の名物「こいのぼりの川渡し」が見られるのは、今年5月7日(土)まで。今年のGWのお出かけは、ぜひ「新茶・新緑・こいのぼり!」を合言葉に遊びに来てくださいね。

(こいのぼり公園におりて、こんな風に下から眺めるのもおすすめです。)

【おまけ話】

山を結ぶために、最初に登場するバインダーの紐。いまはドローンですが、開始当初は原始的に人がロープ担いで対岸まで歩いて船で川を渡り、山をざんざん登って繋いだんですって!

その後に少し発展して、ラジコン飛行機になったときも楽だと思ったけど、木に当たって墜落する事もしばしばでそれも大変やったと。

(今が便利すぎて、昔の原始的方法が嘘みたいやと語る松元さん。)

「今はほんまに、ドローンで楽になったわぁ。」

と語る、十和体育会代表の松元さん(通称てるさん)の話が、何気に一番心に残ったライター佐竹なのでした。

こちらもオススメ

■遊びに来た際はぜひ地元のおばちゃん達が営む「とおわの台所」へ

(鯉のぼりがかかる場所にある直販所「十和の台所」は弊社スタッフも御用達)

■「道の駅四万十とおわ」にはお土産や食事処にカフェも!

(新茶と鯉のぼりだらけの「道の駅四万十とおわ」には、弊社の「おちゃくりcafé」もあります。)