4月は四万十川のうなぎ漁解禁!「川漁師」編

Writer 佐竹

山も人も目覚める春、4月は「うなぎ・川エビ漁」の解禁で、四万十川も賑やかになります。
道の駅よって西土佐の「鮎市場」にうなぎの入荷取材にいった日、四万十川の写真も押さえておこうと、長生の沈下橋に立ち寄る事に。

そこで思わぬ「うなぎ漁解禁」取材後編となったスタッフ佐竹が、漁の現場をご紹介します。

うなぎ漁の川舟を発見

車を停めて沈下橋を歩いて渡り、四万十川の撮影ポイントを探していると、

(春はこの「長生沈下橋」のもとでお弁当をたべるのも気持ちいい)

ん?上流方向をよーく見ると、むこうの川船に人が乗っているではありませんか!

(よーく目を凝らすと、川漁師さんが見えます。)

これはチャーンス!と、河原を走って現場に向かう。

今日は、うなぎ入荷だけでなく川漁師さんの現場写真も撮れるなんて、本当にツイている。

(やはり、船の上でなにやら漁の仕事をしているご様子。)

佐竹「おはようございまーす!四万十ドラマでーす!写真撮らせてもらっていいですかー?」

大声で叫びながらじわじわ距離を縮めてみると、なんとそこに居たのは弊社の役員でもある中脇さん(通称:影さん)ではありませんか!!
これは話が早いと、鮎市場同様にこれまた挨拶もそこそこに、船に乗りこませてもらう事に(笑)

仕掛けづくりは「至福の時」

(すでに前日の仕掛けをあげ終わった後で、仕掛けの直し作業中でした。)

4月に解禁した四万十川の「うなぎ漁」は、夜の内に川へ沈めた仕掛けを朝あげるサイクルのため、地元でも川へ入らない人はあまり見かけることがなく、観光客に至ってはほとんどお目にかからないのではないでしょうか。

(実は、幼少から四万十川に触れてきた私も、こうやって「はえ縄漁」の仕掛けを見るのは初めてだったのです。)

(あっという間にセットされていく仕掛けと、重りに使う川石。)

細い縄に一定幅で釣り糸をくくり、その先につけた釣り針の調子を整えて自作の箱にセッティングしていく。朝引き上げた後に絡まった仕掛けを手際よくほどいて、またその日の夜の漁に備えてひとつずつ整える。根気のいる作業で、とても真似できそうにありません。

(仕掛けの仕組みを教えてくれる影さん)

今回突撃取材した川漁師の影さんはというと、この一番面倒くさいであろう仕掛けづくりが楽しくて仕方ないのだと言います。

影さん「これやる時はなんちゃ考えんでえいけんね、この時間が至福の時よ。」

ウグイスの鳴き声を聴きながらの春の川仕事は気持ちがよく、ちょっこり5分くらいのつもりで河原におりた私も、すっかり1時間はお邪魔してしまったほど。疲れた心を溶かすのんびりした時間がここにはありました。

四万十川のうなぎ漁は、4月1日に漁解禁してしばらくは「はえ縄漁」を行い、漁が終了する9月30日までの間の途中で「コロバシ漁」に漁法を変える時期もあるそうですが、影さんはあえて仕掛けづくりなどに手間がかかる「はえ縄漁」を主流としています。

川漁師も絶滅危惧!?

うなぎのはえ縄漁では、まず川で「はやんぼ」(ウグイ、オイカワ、カワムツなどの総称)と呼ばれる小魚とりからスタート。疑似餌を使って竿で釣り、それをいくつかに切り分けて針につけるのがこの辺りの一般的な漁法なのだとか。

(船の生け簀には餌にする「はやんぼ」が元気に泳ぐ)

中には、道端にいる大型ミミズの「かんたろう」を餌にする人もいるそうです。そちらの方が手間をかけなくてもすむだろうけど、影さんはあえて“はやんぼ”を使います。

影さん「変なこだわりがあってね、なんぼ鰻が食いつくいうても、俺はかんたろうは使わんがよ。変わった人間やなかったら今頃こんな事しよらんけん。」

そしてコロバシ漁になると、餌に使われるのは主にミミズ。はえ縄漁からコロバシ漁に変わるタイミングは、餌のミミズが適度な大きさに育つのに合わせた5~6月頃だというから面白いものです。そして夏本番になるとミミズが取れなくなり、その時点ではコロバシ漁はだいたい終わるのだとか。
(大量にミミズを見つけるのも意外と至難の業なんだそうです)

(入ったら抜け出せない構造のコロバシ)

途中でコロバシ漁をしつつも、主にはえ縄漁を楽しむ影さんはというと、切り餌の「はやんぼ」のお次は、生餌の「川エビ」→「ゴリ」と餌を変えながら楽しみます。もちろん、川エビもゴリも自ら川に入って獲るわけです。
(うなぎは喋らんけど、きっと夏は新鮮な餌がよかろうという計らいだそうです。)

川のキングをとるための餌を、まずは川から調達するっていうところに何だか川漁師のロマンを感じます。よく考えたら、とっても贅沢な食物連鎖ですけどね。

かわりゆく四万十川

(川石は次第に小さくなって藻は減り、泥のようなものが目立ってきました。)

受入れ先である「鮎市場」には、現在10名ほどしかうなぎを出荷しておらず、一回の漁の釣果は1㎏未満がほとんどなのだそうです。天然うなぎは、年々希少になっている四万十川の資源の一つ。それを地元の川漁師さんを通じて、少しずつ川からお裾分けしてもらっているのです。

(この川の中の、うなぎ・川エビ・ゴリ・鮎らが豊かでありますように。)

四万十川も昔と比べると様変わりし、水位が下がってきている事だけでなく、川を浄化したり生態系を保つのに大切な「砂利」が減ってきているのだそうです。

ひと昔前までは、谷から岩や石がゴロゴロと落ちてきて、それがやがて川へ転がり、水流にもまれて形成されながら川の一部になっていた。そんな玉石などのなにげない川の石も、魚などの住処になる大切な資源だったはずなのに、気が付いたらすっかり減ってしまっている。

(枯れることはなくても、四万十川が渓谷のようになるのでは?と危惧する声も。)

地球環境の変化だけではなく、人間やその暮らしを守るための「砂防ダム」の設置で谷から岩や石が落ちてこなくなった事に加えて、「護岸工事」も少なからず影響を及ぼし、それが何十年・何百年という月日を経ていま川を衰えさせているかもしれないといいます。

いつも当たり前にそこにある風景が、静かに危機にさらされているなんて...。

今回、普段の暮らしからほんの一歩だけ四万十川へ踏み込んで向き合っただけで、これまでさほど気にも留めなかった川のいまを知れたような気がしました。

四万十川に負担をかけず、共に豊かに暮らしていくため、ここに住む私達をはじめ何らかの恩恵のある人達みんなで、いま一度大切にするべき資源だなぁとしみじみ思いました。

▼前編の「4月は四万十川のうなぎ・川エビ漁解禁!鮎市場編」

▼四万十川財団「清流通信305章~四万十川の河床環境変化と砂防ダムを考える~」

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